甘露七福神

最近「マクロビオティック」という言葉をよく耳にする。マクロビオティックとは、おもに主食を玄米、副食を野菜などに定め、陰陽道の考えをもとに、体にやさしい食材や調理を行う食事健康法の一つ。精製されていない、できるだけ“まるごと”の食材、そしてできれば暮らしの近くで育まれたものをとることで、自分の体に合った、やさしい食事を心がけようとするものだ。

巣鴨のまちの顔ともいえる“とげぬき地蔵”近くの路地にたたずむ「甘露七福神」は、この理念に基づく和菓子類を出す、日本初の“マクロビオティック甘味処”だ。マクロビオティックといえば字面から西洋的な印象を受けるが、メソッドを確立したのは、何を隠そう、日本人。先に海外で意義が認められたあと日本に戻ってきた“逆輸入”のため、横文字の名称で普及しているという。

甘露七福神

「甘露七福神」がオープンしたのは平成17年。普通の民家の1階部分を改造した造りは「おうちの持ち主と知り合いで、建物の有効活用を相談されまして」とのこと。女将さんは、それまで飲食業に携わったこともなければ、マクロビオティックなるも知らなかったという。

相談された家屋を改造し、長野の実家でそば打ちを習って店でも始めようかと考えていた矢先、たまたま雑誌で目にした「マクロビオティック」に感銘を受け、路線変更。北区の王子で長く製餡業をしていた職人と知り合いだったこともあり、健康的な和のお菓子を提供するべく、マクロビオティックの学校に通い始めたそうだ。「お店の準備をしながら通学する“同時進行”だったので、見かねて『適当なところで開店に踏み切ったら?』と言ってくださる方もいましたが、『どうせやるなら』と開店を1ヵ月遅らせて、納得のいくメニューづくりをしました」と、苦笑まじりに振り返る女将さん。

マクロビオティックでは、精製した砂糖、いわゆる白砂糖は「体を疲弊させる」ので、使わない。甘露七福神では、甘みを加えるのにサトウダイコンから採れる「てん菜糖」を使っている。オリゴ糖を多く含むてん菜糖は、白砂糖よりゆっくり体内に吸収されるので、血糖値の上昇を穏やかにする傾向がある。

甘露七福神

上の画像の「粟ぜんざい」は、野性味すら感じるてん菜糖のコクを堪能できる人気メニューだ。驚くほどなめらかな甘味と舌ざわりは、いろいろな制約があるイメージのマクロビオティックを親しみやすい距離まで一気に縮めてくれる。

中央に浮かぶ粟餅も、「雑穀は食べづらくて」という概念を見事に払拭。程よいプチプチ感がアクセントとなり、食べるのが楽しい。こんなにおいしくて、しかも体にも良い粟ぜんざい、1ヵ月もの間食べに通い詰めた人がいるというのもうなずける。

この粟ぜんざいとある意味対極なのが、甘露七福神の名物「塩あんみつ」。単品もあるが、ところてんとセットになった「七福神セット」も人気だ。ちなみにセットでは、塩あんみつか甘露あんみつ、どちらかを選ぶことができる。

甘露七福神

「塩はあん(餡)の甘みを引き立たたせるのによく使うし」と、深く考えずに口に運んだところ、ビックリ。予想以上に塩気が効いている。あくまで“あん”なので、甘さがないわけではない。根底にはてん菜糖のやさしい甘みが生きている。しかし、名のとおり、やはり「塩あんみつ」なのだ。一口で表現できるほど“甘くない”この塩あんみつ、これまであんを敬遠していた人にこそ食べてほしい、“目からウロコ”の落ちる逸品だ。

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