重吉
綾瀬駅から数分歩いた住宅街の入り口に風情のよい蕎麦屋「重吉」がある。店内は十数席と狭いが、店内奥に電動石臼があり、その左手にはガラス張りの蕎麦打ち場がある。なんと、ここのご主人は以前は音楽家だったらしい。そう言われてみると、ガラス張りのそば打ちスペースが、何となくDJブースに見えてくる気がする。中を覗き込むと、ゆったりと、独特のペースを守りながら蕎麦を打つご主人の姿がそこにあった。
話によれば、ご主人のそば打ちの腕はかなりのものらしい。「江戸東京そばの会」手打ちそば・うどん教室の卒業生の間では『伝説的な腕の持ち主』として語り継がれているのだそう。そんなご主人のそばをじっくりと味えるというのだから、ここはひとつ一杯飲みながらじっくり満喫したいものだ。
まずは「蕎麦掻」(そばがき)をつつきながら、日本酒をいただくというのはどうだろう。日本酒は一の蔵、浦霞、天狗舞、久保田などいろいろと取り揃えられている。銘酒にあわせる「重吉」のそばがきは、そばの実をコーヒーミルでひいているのだそうだ。ミルで引くことで、食感が複雑なものになり舌触りが面白くなるのだという。なるほど野趣あふれる味わいで、まるでそばの実そのものを食べているようだ。
焼き味噌もいい。ほんのり甘い味噌が香ばしくあぶられていて、日本酒にぴったりの味だ。ついつい酒が進み、気づけば杯はあっという間に空になっている。さっぱりとしのぎたいならば、自家製のぬか漬けもいいだろう。なすに、きゅうりに、大根にと数種類の漬物が見た目も美しく盛られ、それぞれに違う味わいに飽きることがなくていい。

軽く口直しをしたところで、「せいろ」を頼んでみることに。そばは細く綺麗で風味豊かで、ツルツルっとすすれば、鼻先にそばの香りが抜けていく。つゆは鰹の風味が強く漂うしっかりとした味で、細い麺との相性も抜群だ。あっという間にたいらげて、最後につゆにそば湯を注いで最後まで美味しくいただいた。そば湯も少しとろみがある、濃厚なものでおいしかった。
知る人ぞ知るそばの名店「重吉」。近くにあればいいのにと、恋しくなるに違いない。

重吉
住所:東京都足立区綾瀬1-33-16
電話番号:03-5680-9077
営業時間:11:00~14:00、17:00~21:00
メニュー例
せいろ・かけそば…680円
田舎そば…840円
焼き味噌…260円
玉子焼き…530円
そばがき…680円
日本酒各種(辛丹波、一ノ蔵、銀盤、浦霞、天狗舞、久保田)…570円より
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